ヒト社会システムと自然学の進化

-古代の自然観から古代自然学へ,中世を経て,近代自然学の成立へ-

 

メタ自然学は,自然が・自然<する>ということ,自然の事物が自己を断えず「再」生産するという「行い」のうちにあること,そうした自然の存在のロゴスの「解()・明(かし)」を,その第1の任務としています.それは,自然学の解明のためのオルガノンとしてのメタ自然学のあり方であり,その初歩的なものは「メタ自然学とは何か」においていささか述べられました.

しかし,この自然の存在のロゴスは必ずしも自然現象そのものとして,わたしたちの眼前に露わに横たわっていて,わたしたちの自然学のオルガノンとしてのメタ自然学による解明をそのまま待っているというものではありません.とりわけ初心のものにおいては,先学の探究の成果を,自らの体験に即し,自らの真摯な思索に於いて,また先学の権威に盲従することなく自由に,かつ「批判的にも」これを学ばなければ,自然の存在のロゴスの深奥に分け入ることはとうてい叶わぬことでしょう.

実際,古代メタ自然学としてのアリストテレスの『形而上学』とは,自然学入門であり自然学概論でもあると同時に,先学たちとりわけイオニア自然学の伝統に連なる人びとの行ってきた自然探究の成果を,批判的に集大成した「自然学説史」でもあったのです.また,自然の存在のロゴスのヒトによる解明の端緒は,自然学成立以前にも,いわゆる農耕牧畜に係わる文化として,その内に,神話や伝説と並行してあったということも忘れてはなりません.

さらに,現代自然学(自然システム論)は,自然の進化の原理としての,相互無危害性と相互善行性の存在を明らかにしてきました.ヒトの発生から文化・文明そしてそのロゴスとしての伝説や神話の発生へ,そして伝説や神話の段階から古代自然学への歩みもまた,ヒトにおける(不完全な)「自然の鏡」の存在と進化の過程でもあったのでした.

ここにおいて,メタ自然学の第2の役割が浮かび上がってきます.メタ自然学は,今や自然学説史となって,ヒトの発生から,農業革命によるポリスの発生,ポリスにおける古代文明の発生,古代文明の発生にともなう伝説や神話の発生,それにともなう古代自然学の発生の過程の解明へと進みます.さらに,中世におけるその継承,ルネサンスにおける復興,近代における産業革命を契機とした進化,そして情報革命を経てついに現代自然学にいたるまでの,自然学 ヒト社会における「自然の鏡」の存在- の進化史を解明するものとならねばなりません.ヒト社会システムの進化と密接不可分なものとして,自然学の進化は<あった>のです.

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目次

 

はじめに

 

ヒト種の起源

 

牧畜と農耕の起源

 

ポリスと自然言語システムの起源

 

古代自然学の起源

 

論理的原子論の起源

 

プラトンの自然学

 

古代・中世・近代における自然学の諸様相

 

結論

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