ヒト種の起源

 

人類はただ1種である  ヒト種は,サルから直接進化したのではなくて,類人猿(チンパンジーやオランウータン)との「共通の祖先」から,「200万年前」に分化した,といわれています.自然の事物の進化の総体は,歴史年表のような直線的な単純な区分ではなくて,多くの種に分化し次第に枝分かれしていきある場合には融合することさえある世界樹のようなものであって,進化系統樹といわれます.その分かれた枝(分枝)が種であって,それがうまく環境に適応しえた場合には,その種が生き残るのですし,反対に適応に失敗した場合にはその種は絶滅します.

ヒト種もまた,この200万年の間,いろんなヒト種を分化させ枝分かれしながら,進化してきたのです.そして,現世種としてのヒト種(人類)が登場したのは10万年前といわれています.彼らはおそらく,それ以前のヒト種,たとえばネアンデルタール人を駆逐して,全世界に広がったのです.

  ヒトがただ1種であること,それはヒト・ミトコンドリアの遺伝子から統計的に推定されたものです.ミトコンドリアは母系にのみ遺伝します.あらゆるヒトは,ミトコンドリア・イヴとよばれる共通のヒト・ミトコンドリアを,ほとんどそのままに受け継いでいます.つまり現世種としてのヒト(人類)はすべて,そうした共通の母方の祖先を,「必ず」もっています.

  ヒト・ミトコンドリアの遺伝子タイプは,今は簡単に検査できます.ホンキで疑うのでしたら,検査してみればいいですよ.自分の母方の祖先(ミトコンドリア・イヴ)がちゃんとわかるはずです.いずれにせよ,少数のミトコンドリア・イヴがいて,それから現世のヒト主が発生したのであり,ヒト種(人類)は,ただ1種の生物種であることが,いまや疑いの余地なく実証されています.

 

ヒト種の存続の原理もまた,相互無危害性と相互善行性,共生と共進化の原理にある  種として「存亡の危機」を乗り越えるには,いわゆる「闘争」によってお互いが滅ぼしあうのではなく,まず協働することによって,つまり「共に・よく・生きる」ための努力をすることによって,より環境に適応でるような能力を獲得することが先決である,といことを地球上の生物は学んできたはずなのです.共同体の存続のためには,目には目をという「血の復讐」のロゴスによるのではなく,お互いに傷つけあうことなくむしろ汝の隣人を愛せよ,という相互無危害性原理と相互善行性原理によることによって,生存のチャンスを増やすことが先決である,と.

ヒト種もまたこれに倣う必要がありましょう.ヒト種とても,「存亡の危機」においては,奪い合うよりも,まずは助け合うことによって,1+1がバラバラの個として2であるそれ「以上」のはたらきをすることで,その危機を乗り越えることです.たとえば,今のヨーロッパ社会は分裂するよりも,まず共同体であり協働態において続けることを選ぶことでしょう.それができなければ,米国や中国に並び立つことは,とうていできますまい.

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