牧畜と農耕の起源

 

共生と共進化の原理が,牧畜と農耕の起源である  ヒト以外においては,無意識に行われる植物との共生関係である採集を,より意識的に拡大「再」生産しつつ行うのが農耕です.有用な種子をより広い肥沃な環境に意識的に植え,余計な雑草を意識的に取り除くことによって,ヒトはより多くの収穫を得ることができます.これは,穀物種にとってみれば,種の分布を飛躍的に拡大させることができることを意味します.さらに,ヒトは収量や品質の多い個体を選別することができ,そのことによって,その収量や品質は安定し,さらにヒトと植物の共生関係は進化します.これが,現代自然システム論が明らかにした共生と共進化のロゴス,共存共栄のロゴスであり,それは「正の行為論的ハイパーサイクル・システム」の出現でありその存在です.

  狩猟から牧畜への歩みも,最初は無意識的に行われたと考えられます.ごく初期は弓矢で狩猟するだけだったのでしょう.集団でわなをしかけて狩りをするような行動が発達すると,生きたものを生きたままで捕えておいて,それを食糧の不足する季節まで飼っておくような「計画性」と「余裕」ができます.すると彼らは勝手に繁殖して,子を産み,さらに乳まで出すでしょう.彼らは結局,飼われることによって,外敵からかえって保護され,餌を与えられて,さらに繁殖することによって,その種としての分布を拡げることができたのです.ここで,単なる不安定な「負の行為論的ハイパーサイクル・システム」つまり単なる捕食関係だったものが,ついに「正の行為論的ハイパーサイクル・システム」に変わったのです.

狩猟から牧畜へ,それは農耕革命と同時期に行われた,共存共栄のロゴス,「正の行為論的ハイパーサイクル・システム」の存在への気付き,であったのでしょう.しかも,牧畜は,草食動物たちがよく食べる植物をヒトが食べることができることによって,つまり草食動物に食用植物を選別させることによって農耕と密接に結びつき,それが農業革命の引き金になったのではないでしょうか.

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