結論
われらがコスモポリスの業(わざ)としてのデモクラシー この自然の内なるわれらがコスモポリス,その全自由市民による共有,それが真のデモクラシーであり,全人民の全人民による全人民のためのコスモポリスの経営,それが政治であり,ポリスの業なのです.このコスモポリスの経営資源,それが狭い意味での世界資本であり,現在ではそれがすなわち世界金融資本そのものでしょう.いわゆる資本「主義」,カネがヒトを食う状態,からのコスモポリスの解放への道,それはやはり世界金融資本をわれらがコスモポリスの制御の下におくことであり,それを不正義の手段となさしめないことです.その不正義の最大のものが戦争です.
ヒトがただ1種のヒトであることが疑いの余地なく明らかになった今や,戦争とは同胞の殺し合いに過ぎず,それはコスモポリスじしんが自らを滅ぼすに至る「内乱」にほかなりません.われらがコスモポリスを,戦争という名の,ヒトが自らを殺戮するだけにすぎない内乱に駆り立てて,ついに「復讐のロゴス」の発現による自らの滅びへの道を歩ませないためには,わたしたちは今何をなすべきでしょうか.
それはやはり,われらがコスモポリスの「老・病・死」を回避し,健康を保ち,病気を癒すこと,でなければなりますまい.つまり,それは問題点の発見,その問題解決法の発見,その問題解決法の試行,断えざる問題解決法の「改・善」であります.それを要するに,PDCAサイクルを,われらがコスモポリスの規模において,永遠に回転させ続けること,でしょう.それこそが古代インドにおいてブッダが発見したといわれる「4つの真理と8つの正しい道」でしょう.
第1の目標として行われるべきものは,核軍縮そして核廃絶であり,あらゆる戦争からの撤退です.つまり人びとのみならずコスモポリスに「死」をもたらすであろう「野蛮」の克服がなしとげられなければなりません.あらゆる紛争解決手段としての戦争の完全な放棄,永遠平和の理想の実現,それこそが究極の目標でしょう.
第2の目標としては,階級対立を激化させ内乱を引き起こしついには社会に「死」をもたらすばかりではなく,あらゆる社会の「病」の根源でもあるところの「貧困」の,克服がなしとげられなければなりますまい.それまずはリーマン・ショックが明らかにしたような金融資本による「貧困ビジネス」,からの撤退でなければなりますまい.御存知のように,アメリカ金融資本は,貧困者層に住宅資金を貸し込み,そのサラ金並の暴利を貪ったわけで,不況によってこの貸し金が焦げついて金融危機を引き起こしたのです.今や貧困ビジネスこそ,あらゆる社会「病」の根源でしょう.日本でも,バブル時に「サラ金」という貧困ビジネスが大流行して,ようやく出資法が改正され,いままで金融資本が貪っていた「暴利」の返却をせまられたサラ金は,次々と破綻しました.
第3の目標が「無知」の克服です.これは次世代を担う人びとに,自然学的,メタ自然学的真理と,「よき・技術システム」のあり方を伝えることによってなしとげられるのではないでしょうか.真理はわれらを自由にし,多くの若い人びとがより自由に自立して自律的に活躍することができれば,それこそはわれらがコスポリスに永遠の若さを保たしめることになり,それはコスモポリスにおける「老」の克服となりましょう.
現代のアメリカはようやく,このことを「再」発見しつつあるのではないか,とわたしには思われます.黒人の血をもつオバマが大統領になる,ということは,全人類がただ1種のヒトであり,その基本的人権,正義と友愛,相互無危害性(安全性)と相互善行性(最適性)原理.がようやく世界的規模において認められたということです.
彼は「核なき世界」を言い出し,ノーベル平和賞を受賞しました.それはコスモポリスに「死」をもたらすものである「野蛮」の克服の道への第1歩です.
彼はまたFRBによる大金融資本の制御を目指していますが,共和党がそれに熾烈な抵抗を行っています.金融資本を一切の社会的不正に加担させないこと,それはコスモポリコス「病」の根源である「貧困」の克服への道への第1歩です.
彼はスマート・シティ構想を打ち出しています.それは若い人びとに職を与えることによって,教養あり心あり節度ある自由市民を増やそう,ということであり,それはコスモポリスに「老」をもたらすであろう「無知」の克服の道への第1歩です.
金融資本が肥大化すればするほど,利潤率は低下します.金融資本は新しい利潤源,要するに「大儲け」の種を求めて,戦争ビジネス,貧困ビジネスに手を出して,手痛い目に合ってきて,ようやく「正義と友愛」に反した行為は自らをも滅ぼす,ということを遅まきながら学習しつつあるのではないでしょうか.また金融資本をして,正義と友愛の理想に反してまで,「大儲け」することができないようにすること,それが資本「主義」克服のための第1歩となるでしょう.