貨幣と剰余価値
-1地域産業システムとしてのポリス-
「貨」幣となった富は世界に流「通」し通「用」して,まったく不変である,1円は永遠に1円である,だから「通・貨」と呼ばれる,ということ,通貨を基準にして社会的な富の価値が測られるということ,これは事実であり何の妄想でもありますまい.
「儲け」には利潤・利益,という意味があります.利潤や利益は,ヒトの自己「再」生産活動がなければ生まれるはずがありますまい.利益や利潤とは,ヒトの労働(=価値「再」生産活動)が産みだした諸価値の総体,ヒトが商品に付加した総価値の,その剰余であり,それ以外の何でありえましょう.
「生産性」って,競争社会では高くなり,独占社会ではむしろ低くなります.独占社会では,独占資本が商品価格をはじめ市場操作ができるから,「利潤」が高くなる,ということでしょ.その独占資本の最たるものがポリスすなわち国家なのです.現代では,国家とても1つの産業システムとして存続する他に存続する術はありません.
御国の預貯金といったって,年金などのいわゆる特別会計,国が国民に将来の支払いを約束したお金で,要は借金には変りないです.それに手を付けたり,それを担保にして金を借りるなどすれば,明らかな「公金横領」であり民間企業なら「特別背任」です.表面は優良企業面をして中身は完全に腐っている大王製紙やオリンパスみたいなものでしょう.
おっしゃるところの,いわゆる事業団やら財団法人やらの「金融資産」というのは,国債の形で給付される「国庫債務負担行為」とよばれるものでしょうが,それがそのまま残っていようはずはなく,すでに使われて(換金されて)とっくに消滅しています.事業団やら財団法人やらは補助金で,トントンでやっている「非」営利団体なのですから,それをいくら取り潰したって,それがそのまま金融資産に戻るなんてことはないです.それは「焦げついた金融資産」でしかありません.財務省(理財局,国の金庫番)はこのことをよくわかっているはずです.彼らがそれを「借金だ」というコトバに嘘はないでしょう.年金基金も,税金からくる現金ではなくて,国債で給付されていれば,それこそ「全くの国の借金」です.それを市場で換金して国民に支払っているのです.
実態をいうと,宇宙開発とか原子力開発とかIT開発と,最終的には産業化を目指した研究・開発を行っている機関があります.「二番じゃなんでだめなの?」で有名になったやつです.それらをまったく止めるとなると,新産業分野の発掘どころか全技術力低下,国際競争力の低下,を覚悟しなければなりますまい.それに,大学法人だって今は独立採算でやっていかなきゃなまりせんしね.それらを全部潰したら,多くの一応は優秀であるような若者たちが行き場を失いましょう.ま,彼らはその覚悟さえあれば企業でもナントカやっていけるでしょうが,日本の研究・開発力は大幅に低下することは免れますまい.未来のヒトに投資する,という国家100年の計に矛盾することにもなりまねません.
ですから,その金融資産が不良資産化しているのと,年金が「予想外」の高齢化と「団塊の世代」が参入してどんどんやせ細っているのと.まさか,85以上を全部「安楽死」させろ,「団塊の世代は年金返上せよ」なんて乱暴な真似はできかねましょうがねぇ.
いいところに「天下り」できる上級官僚は,各省庁に数人,でしょ.それが目だっているから,いわれるのでしょうけれど.全部足したところで,大した金額にはならない.それも「天下り制限令」の徹底(これは実は昔からあったのですが)でなくなるでしょうし.
わたしが言っている増税とは,戦後まもなくの時期がそうであったような累進課税に戻すこと,ウダウダいわずに一億総貧乏を覚悟せよ,ですよ.「金持ち減税」をセッセとやったから,格差社会が生まれた,ということでしょうからね.そして,消費税は完全に福祉目的税化すること.10%ぐらいだったら,今の西欧もそうだから,そして今のドル高ですから,消費者物価はそんなに上がらずにナントカなると思います.
国立大学はいちおう法人化しましたし,ある意味では,「お上」なしでも「民間」からの寄付で十分やっていける体質をもっています.若手はすでに「任期制」の競争社会に入っています.それがホントにいいことかはわからないし,そのなかで鍛えられた「野心家」がヒトラーみたいにならなきゃいいのですがね.とにかく国立大学の「お上」離れはもうはじまっています.
「鉄は国家なり(ビスマルク)」でもありますまい.気の早い連中はもう鉄を見捨てて,バイオ・ベンチャー作りをやっています.新日鉄だって,早々にバイオ工場を作ろうとして「痛い眼」に会っていますし,彼らだって「目先の『儲け』仕事」に血眼にならなければならないような時代です.儲からなくて株価が下がれば,買収の憂き目にあう,という話さえもありました.彼らは今の円高で,製鉄不況で,かえって助かっている,とすらいえるのではないでしょうか.
わが国家は「儲かる仕事」を全部民営化して,あとは「儲からない仕事」つまりヒトを気長に育てるような悠長な仕事,ほとんどそれだけが残されています.当面は「儲からない仕事」暫くは「儲かりっこない仕事」に投資された「金融資産」とやらがどんな目にあっているかは想像がつきませんか.
しかもその国政が,チンケな4億円の裏金をコソ泥のように作って起訴されているような「不正義なボス」に牛耳られているのでは,お先真っ暗でしょ.「不正義」つまり「相互無危害性および相互善行性に反する行為」つまり「不自由(支配と隷従)と不平等(格差・差別)と憎悪(戦争を是とすること)」が,次々と立法されはじめ,誰もそれに反対できないのであれば,それこそがファシズムの到来でしょうね.
国家は,このまま放置しておいたのではいつかは財政的に破綻します.特殊法人や財団法人を始末するのもひとつの方法です.しかし,儲からない法人では,民間では引き受け手がありますまいし,それを始末したところで,いままで支払った「国債」が帰ってくるわけではありません.つまり,借金に借金を重ねる他に,財政出動するような方法は,もう<全く・ない>ということに変りはありません.
国家は財政的に破綻するかもしれない,しかし,国民は生き延びなければなりません.国家を破綻させたくないのなら,いままでさんざん国家を食い物にしてきたお「金持ち連中」でそれを支えていただくしかありますまい.
ここでさらに年金生活者から搾り取ろうとしたって,餓死者がでるだけで,文明国であろうとするなら,到底できないことでしょう.したがって,財政的に破綻しつつある国家を支えるだけの「余裕」などもっていない貧乏人は,もう「お上」などはあてにせず,せめて何があっても生き延びるだけの知恵と気概と技をもとうではないか,わたしがいっているのはただそれだけのことですよ.
わたしの「思想」は高校時代からほとんど変っていません.わたしは漁師の孫であり,鋳物工の息子であり,わたしの母は向かい側の大店の女主人からは「この貧乏人めが」といわれていました.わたし私はただ,貧乏のままでもいいから,自由で平等で友愛にみちた平和な世界が続けばいいな,そうすれば自然の探究すなわち自然学,自然のロゴスの探究すなわちメタ自然学が一生の仕事として続けられるだろう,とただ漠然と思っていただけです.
今,国家を破綻させようとているホントの原因は何でしょう.誰もそれをあからさまにいいませんが,私はそれを「軍」だとおもいます.軍はいかなる価値を産みだしもしません,むしろ人びとを殺戮し,人びとの財産を破壊するだけです.原爆・水爆を頂点とするABC大量破壊兵器もあらゆる武器もそうでしょう.
日本の財政だって,「軍事費」に「消費」されるようになって,だんだん疲弊してきたのではないでしょうか.今,10兆円とやらの最新戦闘機を買おうとしていますが,誰もそれを止めようとしない.10兆円の戦闘機を買えば,それは今後10年間でそれこそ「100兆円の借金」に膨れ上がるだけでしょうし,外国から武器を買ったってなんの経済出動にもなりゃしません.さて大枚はたいて買うその最新戦闘機とやらを,いったいどんな役に立てようとしてるいのでしょうか.大地震や大津波の被害救済に役立つわけでもないのにね.
ホンキで国家財政の破綻を回避しようとするなら,ムリ・ムダ・ムラを省くことです.「軍」とはこれを役に立ててはならぬモノの筆頭で,ムリ・ムラ・ムダの最たるものです.国家財政が赤字なら,まず軍事費を減らせ,それが「あたりまえ」の当然でしょ.顧みれば,あらゆる国家は戦争によって滅びました.ギリシアもローマも,そして大日本帝国も.
IMFの試算によれば,日本「政府」の「債務」残高は2010年時点ですでに1054兆円で,国内総生産(GDP)の220%に達しているそうです.財務省の試算によれば,国債や借入金を合計した「国の借金」が2011年度末の残高で1024兆円に達するそうです.IMFの試算と「ほぼ」辻褄は合っています.
日本のように,円建てで国民から「借金」している場合は,外国からの取り立ては喰いませんから,ギリシアのような,諸外国に影響を与えるようなデフォルトにはなりませんでしょう.しかし,年間総生産あるいは年間総売り上げの「約2倍以上」の借金をずっと抱えているような「一般企業」が,はたしていつまで無事でいられるとお思いになりますでしょうか.
国民総生産(GDP)の1割が税収に回るとして,さらにその半分を国債の償還に廻せるとしたって,完済するのにはどうしたって50年はかかります.それを返そうとするところか,それに加えるに,いまもなお年に40兆円ずつ,「返せるあてのない借金」をドンドン殖やしつづけているわけです.さらに利子払いが年10兆円ずつあります.なんかゾッとしませんか.一体誰が,こんな状態にしたのでしょうね.
結局は,「政府の借金」は,国民全体の預貯金を全部合わせた額に,どんどん近づいてきています.これを要するに,後へ後へと,あてのない未来へ未来へと,借金のつけを回しているだけです.
国家財政が破綻しない,というのは「真っ赤な嘘」です.ヨーロッパでは,国王が国債を発行しては戦費に使い,結局それをデフォルトにしてきました.日本だって,幕府に「御用金」を用立てていましたが,その御用金はどうなりましたでしょうか.大日本帝国にいたっては戦争によって完全に破綻し,国民への借金(戦時公債)は帳消しになりました.あげくがハイパーインフレで,国民の預金はほぼ0になりました.現代ではアルゼンチンがデフォルトになって,アメリカ経済が大打撃をうけたことがあります.
このまま現状を放置して,あと10年でニッチもサッチもいかなくなれば,日本政府だって,国債の価値を減額せよ,あるいはハイパーインフレで実質債務を1/10にしよう,などと言い出すかもしれません.それは結局,国民の預貯金と相殺して,政府の債務を0にすると同時に国民の預貯金の価値を0にする,ということでしょう.
そうなる前に,特に,国債をたくさんもっているような「お金持ち」の方々は,円高ですからせっせとドルを買うとか,増税に応じるとかして,ナントカ国家財政や経済に貢献しといたほうが,国債の価値が0になるよりは余程いいのではないでしょうか.軍事費はGDPの1%です.約5兆円で,国家予算に占める額はそれなりのものです.「借金」を除いた予算の10%です.これを累積すると相当なものにはなりますよ.
まぁ,日本人の健康のためには,日本財政の健全化のためには,まずタバコ増税からはじめることですね.それすらできないようなインチキ政治家をみんなクビにすることですね.